研究紹介

西浦研究室では感染症数理モデルを利用した流行データの分析を専門に研究しています.その中身は以下のように分類できます.

1.新興感染症・再興感染症を中心としたリアルタイム分析研究
2.新規感染者数や時点感染者数の推定と予測,診断率の推定
3.ワクチン予防可能疾患の疫学研究
4.ヒトと環境の接点における感染症研究:野生動物・家畜との共通感染症,環境暴露による感染リスクの検討
5.感染症の自然史推定:感染性,致死率,潜伏期間,世代時間やそれらの決定要因
6.新しい方法論の開発,特に確率過程を用いた尤度方程式の明示的な導出

最近は上記に加えて人口学や非感染性疾患の推定・予測モデルの構築に少しずつ着手しています.当然ですが,実践的研究を多数扱うために,観察データと研究の疑問点に依存して用いる数理モデルを柔軟かつ数理的に大胆に変化させます.また,もちろんですが,数理モデルを用いる必要は必ずしもなく,アウトブレイク調査やサーベイランス,臨床研究などの疫学研究も実施しています.Common threadは「目の前の現象を理解する」ことです.方法論的には邪道であろうと構わないので,逞しく目の前の流行問題や予防接種課題,人口問題などに対峙できる研究面での貢献を目指しています.専門性が役に立ちそうな方,感染症の共同研究が模索できそうな方は,ぜひご連絡下さい.
(文責: 西浦博)

以下,平成29年度4月1日時点の現行プロジェクトをご紹介します.
1.科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業CREST「大規模生物情報を活用したパンデミックの予兆、予測と流行対策策定」(研究代表者:西浦博)
H26-H31年度
本研究は病原体のゲノム情報や実験データを含む大規模な生物情報を利用したパンデミック予兆の捕捉と流行予測を実現し、それに基づいて最も望ましい感染症対策を明らかにします。具体的には、(1)大規模生物学的情報を取り込んだ流行予測モデルの構築、(2)パンデミックの予兆の探知、(3)これら2つのモデルに基づく感染症対策の改善を行います。大規模データを効率的に分析することで、パンデミックの予兆捕捉と流行拡大の予測を世界で初めて日常的に実現すべく、1つひとつの課題に着実に取り組んでいます。

2.科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業RISTEX科学技術イノベーション政策のための科学「感染症対策における数理モデルを活用した政策形成プロセスの実現」(研究代表者:西浦博)
H26-29年度
本プロジェクトでは、感染症の発生動向の分析や公衆衛生政策の立案・決定において、数理モデルを用いて推定値・予測値を提供するとともに、客観性の高い政策選択肢を特定し、保健医療施策を形成するプロセスにおいて数理モデルを日常的に活用する体制・手段を実践的研究を通じて構築する。具体的な研究対象として、【1】効果的な予防接種体制の構築を念頭に各予防接種の効果を検討し、【2】HIV/AIDSを含む感染症の発生動向分析において数理モデルに基づく研究成果を日常的に参照される体制を築き、【3】新興感染症への適切な危機管理など、数理モデルを用いるべき政策判断の過程において客観的手法に基づく研究成果を活用する手段を確立する。

3.日本医療研究開発機構(AMED) 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「感染症対策に資する数理モデル研究の体制構築と実装」(研究代表者:西浦博)
H29-31年度
感染症の数理モデルの研究基盤と専門家の保健医療政策への関わりにおいては、英国とオランダが最先端の取り組みを展開しており、研究ではNature/Science誌に定期的に報告する一方、政府機関や国連機関と密に連携して政策形成に資するフィードバックを提供している。欧米の国や大学で数理モデルの独立セクションが構えられる一方、日本では同課題の実用研究が発展途上の段階にある。他方、東南アジアを中心とする研究機関では感染症数理モデルの研究体制の整備や成果の創出が加速しており、日本を凌ぐ質とスピードで研究が社会実装されはじめている.平成26年度以降、研究代表者(西浦)が中心となり、感染症行政に資する数理モデルの応用研究を実施するために、感染症数理モデルの研究教育コンソーシアムが組織され、共同研究体制や共同指導体制を構築しつつ、厚生労働省等の行政機関と連携して統計学的推定やシステム分析,数値計算などの研究結果を政策に役立てる研究班が運営されてきた。本研究の目的は、感染症対策の考案に資する数理モデルを利用した研究を国際的第一線のレベルで実施することである.特に、過去3年間で得られた体制を更に改善して研究基盤を構築し、その体制を活用した数々の実装研究を展開するフェーズに位置付ける.

4.日本学術振興会(JSPS) 戦略的国際研究交流推進事業費補助金「感染症数理モデルによる流行予測研究の国際研究拠点形成」(研究代表者:西浦博)
H28-30年度
本研究の目的は,研究者の派遣と招聘を通じて,感染症数理モデルを利用した予測研究を抜本的に改善し,国際研究拠点を戦略的に形成することである.具体的な目標として,以下を設定する. (1) アメリカで予測実装研究を経験し,国際政府機関との社会実装研究の手段を確立する. (2) カナダで成功を収めた数理モデル研究コンソーシアム運営に関わりつつ研究経験を積み,国際研究をリードする研究者コミュニティ形成のために日本が取るべき方策を明らかにする. (3) 若手研究者の国際ネットワークの確立と国際共著論文の増加を期して,今後も人材の増加が予想される中国・韓国のキーパーソンを育成し,共同研究プロジェクトの設立・継続を行う. 国際研究ネットワークを強化することにより,新進気鋭の若手研究者のレベルが劇的に改善し,国際流動性の上昇が強く期待される.北海道大学の研究グループが大学院生やポスドクの登竜門として世界で認識され,若手トレーニング機関として定着することを期す.

5.厚生労働科学研究費補助金 エイズ対策政策研究事業「HIV検査受検干渉に関する研究」(研究代表者:今村顕史,研究分担者:西浦博)
H28-30年度
本研究班では、1.検査所の利便性向上、2.受検アクセスの改善、3.HIV診断検査の充実、という3つの柱を立て、より丁寧なopt-in(自発的に受ける検査体制)を組み合わせていくことで検査全体の質を高めていく。そして、自治体と連携した検査体制のモデルを構築することで、我が国の現状に合った、より質の高い検査体制を整備していくことを目指す。

6.科学研究費補助金
科研費研究活動スタート支援 「ノロウイルス感染の自然史に関する定量化研究」(研究代表者:松山亮太)
 H28-29
 ノロウイルスの感染性と不顕性感染の頻度,および,それらの相互作用について定量化を実施します.以下の研究論文が出版されました:
 Matsuyama R, Miura F, Nishiura H. The transmissibility of noroviruses: Statistical modeling of outbreak events with known route of transmission in Japan. PLoS One. 2017 Mar 15;12(3):e0173996.
科研費基盤研究(C)(特設分野研究)「新興感染症の流行を先取りしたリアルタイム推定研究の実装」(研究代表者:西浦博)
 H28-30
 リアルタイム分析の先取り実装を行います.具体的には,基本再生産数や致死率の推定を流行前からR-codeを含めて実装します.
科研費挑戦的萌芽研究 「感染症流行の終息判定手法の開発」(研究代表者:西浦博)
 H28-29
 感染症の流行が「終わった」と言って良い条件を客観的かつ数理的に導出します.
科研費若手研究(A) 「感染者隔離効果の推定手法開発と隔離の有効性メカニズムの解明」(研究代表者:西浦博)
 H29-32
 感染症の隔離の効果を明示的に推定し,かつ,同様の推定をより簡便に実施するためのデザインを明らかにします.
科研費新学術領域研究(公募研究) 「疫学情報と遺伝情報を組み合わせた自然界の微生物保持機構の理論的解明」(研究代表者:西浦博)
 H29-30
 水鳥の個体群におけるウイルス保有メカニズムを疫学情報とゲノム情報の両方を利用して実装します.

7.共同研究: パナソニック株式会社「感染リスク推定とシミュレーションを通じた安全・安心・快適な空間ソリューションの実現」(研究代表者:西浦博)

8.寄付金
電気通信普及財団 「輸入感染症のリスク予測システムの開発と実装研究」(研究代表者:西浦博)
 H29-30
稲盛財団 「理論進化生物学的手法を活用した感染症のスーパースプレッダーの特定手法の開発」(研究代表者:西浦博)
 H29-30